生成AIで物件紹介文を作ると早い反面、そのまま載せてよいか迷う社長は多いはずです。不動産の広告の言葉には、宅建業法と業界の表示規約の決まりがあるからです。
結論から書きます。AIが書いた紹介文は、規約が使い方を制限する言葉と、確かめていない環境・交通・眺望の表現を直してから載せます。写真の扱いと徒歩分数も、規約の基準で確かめます。重要事項説明(契約前に宅建士が書面で行う、物件と取引条件の説明)は、AIの文で代えられません。
この記事は、AI関所を運営する合同会社てんが書きました。私は宅地建物取引士ではありません。業界団体が公開する「不動産の表示に関する公正競争規約」(表示規約)と、宅建業法などの条文の範囲で整理し、私の読みは書き分けています。反響への返信をAIにどこまで任せるかは、別の記事で扱っています。
AIの下書きから消す言葉
AIの下書きに次の言葉があれば、消すか、裏付けの資料と根拠の事実を添えます。 表示規約18条2項は、次の用語を、表示内容を裏付ける合理的な根拠の資料を持つ場合を除いて使ってはならないと定めています。
| 種類(18条2項) | 規約に挙がる言葉の例 | 載せる前にすること |
|---|---|---|
| 最上級(1号) | 最高、最高級、極、特級 | 消す。使うなら資料を持ち、根拠の事実を並べて書く |
| 著しく安い印象(2号) | 買得、掘出、土地値、破格、投売り | 消す。使うなら資料を持ち、根拠の事実を並べて書く |
| 欠けるところがない(3号) | 完全、完ぺき、絶対、万全 | 消すか、裏付けの資料を持つ |
| 他より優位(4号) | 日本一、業界一、超、当社だけ、抜群 | 消すか、裏付けの資料を持つ |
| 選別された(5号) | 特選、厳選 | 選んだ基準の資料がなければ消す |
| 人気が高い(6号) | 完売 | 事実と資料がなければ消す |
意味が決まっている言葉もあります。18条1項は「新築」を、建築工事の完了後1年未満で、まだ人が住んだことがないものと定めています。AIが築2年の物件を「新築」と書いていたら直します。
表示規約は公正競争規約(景品表示法36条にもとづき、内閣総理大臣と公正取引委員会の認定を受けた業界のルール)です。直接かかるのは、公正取引協議会の構成団体に所属する宅建業者などです(4条4項)。加盟していない会社にも、宅建業法32条(誇大広告等の禁止)と景品表示法5条(不当な表示の禁止)はかかります。
環境・交通・眺望は、確かめた事実に置き換える
「閑静」「日当たり良好」「駅近」のような言葉は、確かめた事実に置き換えます。 宅建業法32条は、広告で物件の環境や交通その他の利便について、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良だと誤認させる表示を禁じています。
表示規約23条も、徒歩の所要時間(5号)、日照・眺望(38号)、周囲の静けさ(39号)について、実際より短い・優良だと誤認されるおそれのある表示を禁じています。
| 下書きの表現 | 置き換える事実 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 駅近、駅まですぐ | ○○駅まで徒歩8分(道路距離620m) | 地図で道路距離を測り、80mを1分として計算する。1分未満は切り上げ |
| 閑静な住宅街 | 前面道路の幅、周りの建物の用途 | 現地で見て、言えることだけ書く |
| 日当たり良好、眺望良好 | バルコニーの向き、階数 | 図面と現地で確かめる |
| スーパー・学校が近くて便利 | 施設の名称と道路距離(または徒歩分数) | 今使える施設だけ書く(施行規則9条29号) |
徒歩分数は、施行規則9条9号が「道路距離80メートルにつき1分間」と定め、1分未満の端数は1分として数えます。620mなら7.75分なので、8分です。道路距離は地図で人が測り、AIが出した分数は使いません。
写真をAIで加工するときの線
物件の写真は取引する物件のものを使い、CG(コンピュータグラフィックス)や完成予想図はその旨を書きます。 施行規則9条22号は、写真や動画は取引するものを表示するよう定めています。建築前などで撮れない事情があれば、条件つきで他の建物の写真を使えます。その場合は、他の建物である旨を写真に接する位置に書きます。
9条23号は、CG・見取図・完成予想図はその旨を明示して使い、周囲の状況は現況に反する表示をしないよう定めています。表示規約23条42号・43号は、写真やCGで規模・形状・眺望を実際より優良に見せる表示を禁じています。
生成AIでの加工も、私の読みではこの3つの条文に照らして判断します。社内で決めておく目安を表にしました。迷う加工は、所属する公正取引協議会に確かめてください。
| 加工 | 社内の目安(私の読み) |
|---|---|
| 空の部屋に家具を描き足す | CGで描き足した旨を写真に書く |
| 窓の外の景色や空を差し替える | しない(眺望は現況のまま) |
| 部屋を広く見せる変形 | しない(規模・形状は事実のまま) |
| 建築前で、他の建物の写真を使う | 他の建物である旨と、異なる部位を書く(9条22号) |
成約済みの物件の掲載
AIで紹介文を早く作れても、成約した物件を載せ続ければおとり広告になります。 表示規約21条は、実際には取引の対象となり得ない物件の広告を禁じています。連合会のおとり広告ガイドラインは、その例に成約済みの物件を挙げ、インターネットの広告も規約の「表示」にあたるとしています。紹介文を作る手間が減った分、掲載中の物件を見直す曜日を決めます。
重要事項説明とAIの文
重要事項の説明は宅建士が書面を交付して行う決まりで、AIの文で代えられません。 宅建業法35条は、契約が成立するまでの間に、宅建士に重要事項の書面を交付して説明させると定めています。宅建士は宅建士証を示して説明し(35条4項)、書面に記名します(35条5項)。
検索上位には、生成AIで重要事項説明書の下書きを作る使い方を紹介する記事もあります。私の読みでは、AIに任せてよいのは、書面の項目に抜けがないかを点検する補助までです。法令上の制限や私道の負担は、役所や登記で確かめた内容を宅建士が説明します。紹介文に法令上の制限を書いても、35条の説明の代わりにはなりません。
掲載前のチェック表
紹介文1本ごとに、次の6つを確かめてから載せます。 印刷して、掲載を担当する社員と共有できる形にしました。
| 確かめること | 見る資料 | 根拠 |
|---|---|---|
| 最上級・安さ・完全・優位・選別・人気の言葉がないか。あれば資料があるか | 下書き、裏付けの資料 | 表示規約18条2項 |
| 「新築」は完了後1年未満で、人が住んでいないか | 建物の完成日、入居の有無 | 表示規約18条1項1号 |
| 徒歩分数は道路距離80mを1分として計算したか | 地図で測った道路距離 | 施行規則9条9号 |
| 環境・眺望・施設の表現は、確かめた事実か | 現地、図面、施設の名称 | 宅建業法32条、表示規約23条 |
| 写真は取引する物件か。CG・加工はその旨を書いたか | 写真の元データ | 施行規則9条22号・23号 |
| 成約していないか | 売主・貸主への確認 | 表示規約21条 |
確かめた担当者と日付を物件の管理表に1行残すと、後から経緯をたどれます。
よくある質問
公正取引協議会に入っていない会社も、表示規約を守る必要がありますか?
表示規約が直接かかるのは、協議会の構成団体に所属する宅建業者と、規約に個別に参加した業者です(4条4項)。加盟していなくても、宅建業法32条と景品表示法5条はかかります。表示規約は、広告を直すときの物差しとして使えます。
AIで書いたことを、紹介文に書き添える必要はありますか?
連合会が公開する表示規約と施行規則の本文には、AIや生成AIに触れた条文はありません(2026年10月7日確認)。求められているのは、中身が事実どおりで、誤認されない表示であることです。写真のCGや完成予想図は、その旨を明示します(施行規則9条23号)。
反響への返信も、AIに任せてよいですか?
反響の受付と日程調整、物件資料に沿った返信の下書きまでなら任せられます。将来の値上がりを言い切る返事や重要事項の説明は、AIにさせません。線引きは反響対応の記事にまとめています。
まとめ
AIが書いた物件紹介文は、規約18条の言葉を消すか裏付け、環境・交通・眺望の表現を確かめた事実に置き換えてから載せます。徒歩分数は道路距離から計算し、写真の加工はその旨を書きます。重要事項の説明は、宅建士が書面で行います。掲載前のチェック表を、紹介文ごとに使ってください。
AIツールを決める前に、第三者と一緒に見たいとき
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AI関所のサービス内容を見るこの記事を書いた人
疋田 悠人(ひきだ ゆうと)です。合同会社てんの代表で、AI導入の判断を中小企業の経営者と一緒に行う「AI関所」を運営しています。宅地建物取引士ではありません。この記事は法律の助言ではなく、公開されている条文と業界団体の規約をもとにした整理です。
出典・参考
- 不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則 規約4条・18条・21条・23条、施行規則9条 (不動産公正取引協議会連合会・2026年10月7日確認)
- 『おとり広告』の規制概要及びインターネット広告の留意事項 (不動産公正取引協議会連合会・2019年11月1日・2026年10月7日確認)
- 宅地建物取引業法 32条・35条 (e-Gov法令検索・2026年10月7日確認)
- 不当景品類及び不当表示防止法 5条・36条 (e-Gov法令検索・2026年10月7日確認)


